【エマニュエル・トッド】 『西洋の敗北』で予測する日本の危機「NATOは崩壊し、日本は中国と独力で向き合うことになる」
【エマニュエル・トッド】 『西洋の敗北』で予測する日本の危機「NATOは崩壊し、日本は中国と独力で向き合うことになる」
【エマニュエル・トッド】 『西洋の敗北』で予測する日本の危機「NATOは崩壊し、日本は中国と独力で向き合うことになる」
(文藝春秋刊)を刊行したフランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏は、日本の今後について、次のように分析した。
ー中略ー
・脱西洋化が進むと「日本の立ち位置」はどうなる?
最後に、これから脱西洋化が進むと思われる世界の中での日本の立ち位置について、短い見解を述べておこう。
西洋は、ロシアに制裁を科すことで、世界の大半から拒絶されていること、非効率的で残忍な「新自由主義的(ネオリベラリズム)資本主義」や、進歩的というよりも非現実的な「社会的価値観」によって、自らがもはや「その他の世界」を夢見させる存在ではなくなったことに気がついた。中国だけではなく、インド、イラン、サウジアラビア、アフリカも、結局はロシアの「保守主義」、そして「国民国家の主権」というロシア的な考え方(もちろんそれは、ロシアの歴史の一部と考えられているウクライナに
適用されるわけではない)をより好むようになったのだ。
この戦争において、「多極的な世界」というロシアのビジョンは、西洋が中心となる「均一な世界」というビジョンと対立している。
西洋モデルの政治的観点からすると、均質的であるべき世界──リベラル、資本主義、LGBTなど──の覇権的中心地はアメリカだ。
私は、日本の地政学的文化の深い部分では「諸国家はみな同じ」というビジョンは受け入れられないのではないかと考えている。
「均一な世界」というアメリカのビジョンは、日本的観点からすると、敢えて言えば「馬鹿げたもの」だからだ。
日本には、「それぞれの民族は特殊だ」という考え方があり、むしろ「それぞれの国家の主権」というロシアの考え方の方が日本の気質にも適合している。
実際はドイツでも、「すべての民族は同じ」という考え方は馬鹿げたものと見られるだろう。
ドイツでは「すべての民族は同じ」という考え方は表面的に受け入れられているだけなのだ。
受け入れることで、第二次世界大戦における自らの人種差別的な残虐行為を忘れることができるからである。
日本では私が考えるに、「独自の歴史」という感覚は「本能的」なもので、しかも「リアル」なものだ。
西洋の敗北は、日本が「独自の存在」としての自らについて再び考え始める機会になるはずである。さらに、日本が西洋の一部としてではなく、ネオリベラルの極西洋(アメリカ、イギリス、フランス)と「その他の世界」の仲介役として自らを捉える機会にもなるはずだ。
(大野舞訳、 『 西洋の敗北 日本と世界に何が起きるのか 』より「まえがき」を全文転載)
エマニュエル トッド/文藝春秋 電子版オリジナル
全文はソースから
12/7(土) 6:12配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/58298c200d118f224b674aa686ef43a4d7c68fa1