1人当たりGDPに続き輸出でも日本を抜く日が目前、でも晴れない韓国経済
1人当たりGDPに続き輸出でも日本を抜く日が目前、でも晴れない韓国経済
1人当たりGDPに続き輸出でも日本を抜く日が目前、でも晴れない韓国経済
「以前は夢にさえ思えなかったことが目の前の現実になった」
最近の記者会見で韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル=1960年生)大統領は力強く言い切った。上半期の輸出額が日本に迫ったのだ。
ただ、輸出は好調でも体感景気はさっぱり。韓国経済が抱える構造的な課題でもある。
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日本の輸出はここ数年好調だったはずだ。2023年の年間輸出金額は初めて100兆円を突破した。
2010年には67兆円だったから、かなりの伸びだった。
だが、これをドル建てでみると異なる様相となる。
日本の輸出金額は2010年の7670億ドルから2012年には8000億ドルを超えたが、これをピークに減少した。2023年は7191億ドルだった。
韓国の輸出統計は基本的にドル建てだ。2010年に4664億ドルだったが、2023年にはこれが6322億ドルに増えた。
尹錫悦大統領はこの日の演説で「1人当たりGDP(国内総生産)でも昨年、初めて日本を抜いた」と語った。
日韓の経済指標をあれこれ比較する際に、最近の円安ドル高は大きな影響を与えている。
日本を「抜いた」「迫った」はともかく、大統領が強調するように、韓国の輸出が2024年に入って絶好調であることは間違いがない。
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韓国は輸出立国のはずだ。
半導体業界や輸出が好調なら、韓国経済全体も好影響を与える。確かにちょっと前までは、そうだった。
でも、景気は悪い
ところが、いまは「景気が良くなった」という話を周辺でほとんど聞かない。
それどころか、「景気は本当に悪い。輸出が絶好調というけれど、低迷していた半導体市況が回復して半導体が好調になっただけ」(韓国紙デスク)という冷めた声が圧倒的だ。
大統領の「国政ブリーフィング」の翌日、韓国の統計庁は「7月の産業活動動向」を発表した。
全産業の生産は前月比0.4%減で3か月連続でマイナスだった。小売販売も同1.9%減だった。設備投資は二桁増だったが、建設投資はマイナス。
生産、小売り、建設が良くないことで、景気の現状を示す動向指数は5か月連続マイナスだった。
生産活動に関しては、半導体など一部分野は好調だが、広がりに欠ける。内需は、ずっと弱いままだ。
地方都市でアパートの売れ残りや予約不振で建設計画の取り消しなどが相次ぐなど、建設景気は良くない。
絶好調の輸出とは全く違う姿があちこちで見られる。閣僚経験がある大学教授はこう話す。
「最近になってようやく消費者物価上昇率が2%台に収まってきたが、物価上昇が止まらなかった。賃上げ抑制が続き、可処分所得は増えず、格差も縮小しない」
(略)
廃業や賃金未払いというと穏やかな話ではないが、実際にこういうことが起きているらしい。
8月30日に就任したばかりの雇用労働部の新任長官は翌日に緊急幹部会議を招集し、最初の指示を出した。
「賃金未払いに対して総力を挙げて対応せよ」
経営が苦しくなった中小企業や個人商店が少なくないのだ。これでは内需が良くなるはずもない。
半導体だけでは牽引できない
なぜ、半導体を中心とした輸出の好調が韓国経済を牽引できないのか?
先の大学教授は「半導体以外の分野で力強い成長が見えない。半導体依存がさらに高まっている」と話す。