なぜメディアは「韓国でコメを買う日本人観光客が急増」と伝えたのか
なぜメディアは「韓国でコメを買う日本人観光客が急増」と伝えたのか
なぜメディアは「韓国でコメを買う日本人観光客が急増」と伝えたのか
この記事を読んだとき、メディアが何を伝えようとしてこれを報じたのかがわからなかった。
記事の末尾には、「日本にコメを持ち帰る際には検疫所で検疫証を発行してもらう必要がある」こと、「海外から個人で持ち込む場合、過去一年間の輸入数量が100kg以下であれば届け出すれば納付金が免除される」と、韓国から買って帰る際の注意点まで書いてある。
つまり「韓国はコメが安いよ。多くの日本人観光客が買って帰ってるから、検疫証をもらい、100kgまでなら納付金も要らないから、あなたも韓国で買って帰ったらどう?」と、韓国へ行って安いコメを買うことを視聴者に促しているのだろうかと思った。
だが、それはメディアがいま報じるべきことなのだろうか。
・検疫が月0〜1人から月20名に「急増」
記事によれば、韓国の疾病管理庁のコメの検疫受付が、毎月1人いるかどうかだったのが、2025年3月以降は毎月20名ほどに増え、大半が日本人観光客とのこと。
確かに、0か1だったのが20に増えれば「急増」と言えるのかもしれない。
だが、株式会社JTB総合研究所が2025年4月15日に更新したデータによれば、今年2025年2月に韓国を訪問した日本人観光客は224,482名いる(3)。仮に2025年3月もこの人数だとすれば、その中の20名は、全体の0.008%に過ぎない。
0.1%にも満たない人の一部の人の行動を、わざわざ報じて、広く一般の人に注目させる意味があるのだろうか。
・韓国へ行く金があるなら日本でコメを買えるのでは
そもそも、韓国へ観光旅行に行くだけのお金があるのなら、日本のコメもじゅうぶん買うことができるのではないかと思う。
消費者にできることの一つは、日本のコメを買い、生産者を支えることだ。
いま、日本の農家の平均年齢は69.2歳で、ほぼ70歳と高齢化している(4)。
稲作農家の時給は2022年時点でわずか10円。農林水産省のデータによれば、2023年時点でも農家の時給は97円にしか上がっていない(5)。
日本で生産されたコメを、日本に住む消費者が買うことで、日本のコメ農家や米穀専門店を支えることができる。
・消費者としてコメ農家を買い支える責任
消費者には権利があるが、責任もある。社会や環境のことを考えて消費行動をする責任がある(6)と、1982年に国際消費者機構が提唱しており、このことは、日本の中学校の家庭科の教科書にも掲載されている。
消費者は、自分たちが選んで買うものが、社会全体に影響することまで考える責任がある。
消費者の「社会的関心を持つ責任」や「環境への自覚の責任」(ながさき消費生活館公式サイトより)
日本には、海外旅行どころか、国内旅行にも行くだけのお金がない家庭がある。そのような家庭は、コメを買うのに苦心している。
だが、海外旅行に行ける人が、旅行代よりはるかに安い日本のコメを買い惜しむのはどうなのだろうか。
・毎日捨てている米飯を減らすことが急務
ー中略ー
・マスメディアの責任とは
マスメディアは、一般消費者の考え方や消費行動に大きな影響力を持っている。
最近のコメに関する報道では、コメの値段が「高い」か「安い」かに偏っている(11)。
農林水産省が2025年4月に発行した資料(12)によれば、ご飯1杯当たりのコメの値段は約50円とある。これは5kg3,878円で計算されているが、仮に5kg4,000円強だとしても55円程度だ。
ー中略ー
マスメディアが「韓国に行けば日本の半額でコメが買える」と報じることが、いま、日本の食料安全保障やコメを守るために本当に必要なことなのか、考えてほしい。
井出留美 食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
全文はソースから
4/19(土) 7:08
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/626a6d6bd7edf22783b41a928b79b499102fc5f7